「リホンって、どこ出身なんだっけ?」

この話は、一人のバケモノの問いかけにより始まる。
リホンとルシファは署内の施設「ENERGY THE BAR」へと足を運んでいた。
カウンターを向かいに二人で座り、それぞれが自分の好きな飲み物を注文する。

「チャイナクロノあるよ。地図にも載らない小さな村アル」
「へぇ……やっぱ皆強いのか?」
「当たり前アルよ! 武闘派民族アルもの」

そこに二人分の飲み物が届く。
リホンは烏龍茶、ルシファは牛乳を受け取り、ストローでちびちびと吸いながら話は進む。

「へぇ……でもやっぱりリホンが一番だったんだろ?」
「……あぁ、まだルシファには話してなかったアルね……」

この一言で、リホンの表情がやけに深刻になったことをルシファは見逃さない。
戦士が見せる微かな弱み。ルシファにはそれが不思議に見えた。
リホンはやがて口を開き、話すべき事を話し始めた。

「ボクには、親友がいたアルよ」

 


The past
リホンの場合

 


「リホン! リホンどこだっ?」

海のような霧に包まれた、水墨画から出てきたかのような猛々しい山々の山頂付近。
チャイナクロノはそこにあった。最強の名を司る戦闘民族の集落だ。
その集落では地上とは少し変わった風習がある。全ての子供は三歳になると同時に寺へと入門させられるのだ。
早く言えば体育に特化した小・中・高一貫校のような物。
チャイナクロノの者は、此処で己を鍛えて世の中を生きる術を教わる。

「リホーォン!!」

薄ら寒い山頂に立ち、一人の少年が大声で朝に声を響かせる。
飛び出した声は山々へとバウンドを繰り返し、やがて空気の中へ溶け込んでいった。
少年は真っ黒い身体に淵の白い中華帽を被り、帽子の頂点には三編みに結われた紐が垂れ下がっている。
闇の渦に吸い込まれそうな濃い紅色の目にキョロキョロと辺りを探させ、もう一度深く息を吸い込む。

「リッホォーン!!」
「なぁーにアールかーぁ?」

少年は再び大声を反響させる。山びこが静かに響き、雲の流れる音が聞こえた。
そして余韻もやがて消え去った頃、やけに間延びした柔らかい声が山々を蹴りながら少年の耳に届く。

「戻ってこぉーい! 長老がぁー、話があるってー!」
「りょうかーいアルーっ!」

色々と傍迷惑な山びこでの会話を終え、少年は微塵の恐怖心も抱かずに山頂から跳び下りるように集落へと下っていった。
何を隠そう。今日はあの二人にとって、運命の日なのである。

 


「戦え」

長老は余りにも簡潔に用件を述べた。
前に並べられた二人はその言葉を初めから分かっていたかのように、引き締まった顔をしている。
今日は最終決断の日。言い方を変えると”一番強い奴を決める日”である。

「リューオ、リホン。お前たちは修行生の中でも群を抜いて優れていた。
 故に、この中から一人を選ぶなどと言う事は私達では到底出来ぬ……」

少年、否リューオは話を聞いているリホンの横顔を見る。
その顔は、昔の無邪気なリホンよりも格段に大人びて見えた。

「そこで、お前達には実際に戦ってもらい、そこで最後の審判を下す」

長老が威厳を含ませた視線を二人に向ける。

「分かった」
「はい、アル」

二人の”戦士”は同時に返事をし、自然にお互い向き合う形を取った。
生まれた時から友達でありライバルであった二人の瞳は、互いに全力の炎を宿している。

「幼馴染だって、容赦はしないぜ!」
「分かってるアルよ!」

長老は二人の覚悟を確認し、目を伏せた。
リューオとリホンは決闘場へと上がり、お互いに同間隔で間合いを取る。

「ルールは、武器無しでの格闘戦。自らの能力を使用する事を許可する」

二人の精神はやがて流れる一本の線となり、視界に入る物はお互いの姿だけとなった。

「  」

長老の言った言葉の音は脳裏には届かず、その響きだけが体全体を駆け巡る。
リホンは地面に強く足を張り、気を辺りに充満させる。筋肉が躍動する音が聞こえた。
その瞬間体中の体液が沸騰するような勢いで体温が急上昇し、やがてリホンの身体の随所から高温の炎が湧き上がる。

「紅蓮拳!」

溢れんばかりの炎を纏ってリホンの右拳が唸る。
拳の周りを覆う業火は生き物のように形を変え、やがて螺旋状の槍を模した炎を作り出した。

「捻葬(ツイスト)」

リホンはその豪快な炎の槍を後方に構えた状態でリューオに突撃する。
リューオと言えば、ずっと目を瞑り続けている。リホンの熱気が迫ってきてもお構い無しだ。

「獅子御法」

突如リューオは目を閉じた状態で向かってくるリホンに対して身を屈ませた。
そして屈んだ事により重心が低い位置にあるのに関わらず、その状態を維持しながらリホンの懐まで素早く迫った。
リホンの火の粉を受けない位置を本能で察知し潜り込み、リホンの紅蓮拳の根元に掌圧を叩き込む。
パァンと真空状態が解放されるような音がして、リホンの身体は燃え盛る槍と共に宙へ投げ飛ばされた。
リホンは槍を空気に還す。そして体勢を立て直す為に宙で空中後転を二回繰り返し、リューオを向いて片膝をついた状態で着地。

「心眼と摺足……ボクが習得できなかった技術アルね」
「俺は此処まで、終始目を瞑っていた。リホン、本気を出せ!」

閉じていた目を見開き、苛立ちの視線でリホンを睨むリューオ。
リホンの顔は依然として笑顔だったが、そこには戦いを楽しむ強い意志が確かに込められていた。

「閃氣道」

リューオは再び目を瞑り、腕を頭上で交差させた。
それと同時に黒い気がリューオの身体を覆う。それに混じり黒い魂のような物が複数、リューオの周りを飛び交った。
気はやがてリューオを球状に包み込み、魂はそれに沿うように円を描いて動き回る。
いずれもリューオの放出する物からなる物であり、異常な程の威圧が空気に震動を与えた。

「すげぇだろ? お前を追い越したいが為に、修行したんだ」

黒いオーラを纏いながら、リューオはリホンに挑戦的な表情を向ける。
それは先程の家族よりも仲の良かったリューオではなくなっていた。今リホンの目の前にいるのは”最強の相手”、リューオである。

「まずいアルね。このままじゃチャイナクロノを抜け出せなくなっちゃうアルよ」
「なんだよそりゃあ」
「秘密、アル」

それだけ言うとリホンも戦闘態勢を取り直す。
両の拳を炎で包み込み、空間が熱気で揺らめきだした。
リューオも覇気を纏いながらリホンに向かって一歩、二歩と足を踏み出す。

「ホアタァッ!」

コンマ何秒の差だったろうか。
片足を炎で包んで跳躍回し蹴りを放ったリホンと、それを一歩下がって受け止めるリューオ。
リホンが着地した隙を見計らい、構えを見せていたリューオが一歩踏み込み、
両掌に凝縮した蒼海のごとき蒼い塊をリホンの身体に押し当てるようにぶつける。

「刹軌掌ォ!」

空気を震撼させる重い音が短く響き、リホンが蒼い雷に蝕まれながら後方まで吹き飛んだ。
地面に落ちたリホンの身体には、未だに電流の余韻が走っている。

「ぐっ、内臓を……ちょっと持っていかれたアル」
「流石だな。攻撃を受ける寸前に力を抜いて勢いを殺したか」

リホンは攻撃を受けると分かっていながら、わざと力を抜いて衝撃を背後に逃がしたのである。
しかしそれでも肉体が受けたダメージは大きかったようだ。リホンは血の唾を吐き、口元を腕で拭った。
流石リホンだ、と一言呟いて、リューオは次の攻撃の構えに移る。

「それにしても、そのエネルギーは雷だったアルか」
「雷を使えるのは修行した俺だけだからな。誰も知らないし誰も使えない」

リューオは片手に黒い気を集中させて、バチバチと雷を唸らせる。
そして雷の迸るその手を天高く掲げた。

「リホン、お前も本気で来い。俺にだけ本気出させる気か?」

大量の蒼い雷が突き出した腕をバチバチと取り巻き、
いかにも強力そうな光の球を作り上げた。
それを片手に移して横に構える。本人もその威圧から口を開けずにいるようだ。

「リューオ……いつの間にか、強くなってたアルね」

感嘆の息を漏らすと、リホンは巨大な雷を前に強く踏ん張った。地面にひびが入る程、強く。
すると地面の随所から湯気が上がり、辺りは陽炎を見せるような異様な熱気に包まれる。
辺りを焦がす勢いで上昇した温度はリホンの潜在能力を底上げさせた。

「俺が勝つんだぁっ!!」

巨大な雷を掌大にまで凝縮し、今にも弾け飛びそうな強力雷球を片手にリューオは突っ走る。
雷球の軌跡は空気中に蒼い線を残して、曲線を描くようにリューオがリホンへと突撃。
蒼い線は動きにあわせてしなやかなカーブを描いて見せた。
標的は、目の前に立っている、リホン。

天地のひっくり返るような怒号が響き、大雲を焼き尽くさん程の眩い光が辺りを蹂躙する。
殴り当てられた雷球はさながらバズーカのように後方へと余り余ったエネルギーを発散させ、それを浴びた山肌が表面を焦がした。
ピリピリと電流を持て余す腕を下げ、辺りを見回す。先程まで目の前にいたリホンの姿はどこにもない。
遠くへと吹き飛んだのか、はたまた体全体が木っ端微塵に消滅してしまったのか。あまり考えたくない話だが。
そんな事を考えていると、頭上から馴染みのある声が聞こえた。

「気を抜いたアルね」

振り向こうとした時には遅く、リューオの後頭部に重い衝撃が走る。
それと同時に焼け付くような痛みが襲う。その直後にリューオの身体は全身炎の塊に包まれた。

「あっ、がああっ!! くっ、はっ、く、くそっ!! おぉぉ……」

メラメラと炎を上げて転げ回るリューオの前に現われたのは、紛れもないリホンだ。
リホンは息を荒げてその場に立ち尽くしており、片手に大きな炎を滾らせている。

「ボクがしきりに周囲の温度を上げていたのは、この時に全てを賭けてたからアル」
「うおお……あ、あづいぃぃっ……」
「リューオが攻撃したのは、ボクの隣の蜃気楼だったアルよ」

鏡映蜃気楼。
密度の異なる大気中で光の屈折により、
物体の側方に蜃気楼が出現する、極めて稀な存在。
リューオの体の炎は消える事無く燃え続け、鉄板のように熱くなった地面に身体を横たえたままだ。

「勝負あったアルね」

リホンが力んでいた気を抜くと、周囲の熱は一気に山頂の冷たさに吸収され、地面の熱も徐々に下がる。
リューオを蝕んでいた炎はやがて消え失せる。彼はぶすぶすと煙を燻ぶらせながら弱弱しい呼吸を繰り返していた。

「畜生、……俺はいつでも、ナンバー2だ」
「そんな事無いアル、ボクだってあそこで蜃気楼が出現してなかったら……今頃お釈迦アルよ」

その時リホンの体からがくんっと力が抜け、リホンはその場に膝をつく。
体中から汗が滴り、小刻みに体が痙攣しているのも見れ取れた。

「最後の攻撃の時にリューオに触ったせいアルか……体が、痺れる、アル」
「あぁ、あの時俺の体は強力な電力媒体代わりとして機能してたからな。無理もねぇ」

痙攣はやがて体全体に広がり、全身麻痺を侵してその場に倒れこむ。
身体は未だに微震動を繰り返し、時たま身体を蒼い電流が這った。
それを見て、今までずっと沈黙を続けていた長老が初めて口を開く。

「この勝負――」

風が吹く。

「リューオの勝ちじゃ」
「――え?」

自分の勝ちを確信していたリホンは耳を疑った。
その後ろでゆらりと立ち上がったのは、リューオのシルエット。

「悪ぃなぁリホン。芝居ぶっててよ」

リホンは倒れたまま動けず、ただその言葉を受け止める。
立ち上がろうともがくも、電流に神経を犯されているのでぴくりとも動かない。

「お前の炎はガキん頃からずっと受け続けて、かねてから攻略法を考えてたんだよ。
 ……15年間、ずっとな」

リューオの掌に黒溜まりが渦巻く。
荒れ狂った雷雲のような氣が掌全体を包み込み、やがて蒼い雷が表面を走りだした。

「実際はな、今だって危なかったんだ。あそこで芝居してなきゃ、お前は気ぃ抜いてなかっただろうし……な」

あの時の炎のダメージは、しっかり効いているようだ。
敵を欺く事も戦略の一つなり。リホンは多少の幻滅を覚えながらも、リューオの知略さに尊敬を抱く。

「最後に」
「あ?」
「負けたアルよ」
「へっ。……刹軌掌」

 


「長老、今終わった。……相手を殺してはいけない、これがルールだったな」
「おめでとう。この瞬間から、お前がこの村の最強を名乗ることが許される」
「こんな狭い世界で威張れても、面白くねぇなぁ」
「……これは、村宝”ハンニバル”。かつて伝説と呼ばれた男の使っていた武器だ」
「知ってらぁ。――だろ?」
「これを、今日からお前に託す。そして、この村を出て行くことを認めよう」
「……」
「決断は、何も今すぐにしろとは言っていない」
「なぁ、その事なんだけどよ。一つ頼みがあるんだ――」

 


「……うっ、此処は……」
「村の診療所だ」
「あ、リューオアルか……」

気づけば、リホンは白いシーツの上に横たわっていた。
上には温かい羽毛布団が被せられ、その脇には包帯に体中を巻かれたリューオの姿がある。
色々と思い出してきた。
自分は、欺かれ、負けたのだ。

「……嘲笑しに来たアルか?」
「バカ、そんなんじゃねぇ」

リューオは屈託のない笑顔を見せ、布団の中に手を突っ込んだ。
リホンは体が動かないので、成す術もなくその様を見ているだけである。
すると、リホンの手に固くて冷たい物が当てられた。
リューオはリホンがそれを受け取ったのを確認すると、布団から手を引っこ抜く。
その固い物は、紛れもなく村宝ハンニバルそのものであった。

「なっ、これって……!」
「バカ! 布団から出すな、バレると色々まずい」
「これは、リューオの物アルよ。返すアル」
「まぁ待て。これが元々誰の物か、知ってるか?」

ハンニバルを返そうとするリホンの手を頑なに抑えるリューオ。
意味深に発せられたリューオの言葉に、沈黙が流れる。

「お前の、親父だよ」
「……え?」

リホンの顔にあからさまな驚愕が映し出される。
リューオはそのまま、その話を続けた。

「お前の親父が、この村を出て行く時に村に残していったんだ。
 ――って、俺の親父から聞いた」
「パパの……武器だったアルか……」

布団の中でハンニバルを見つめる。
赤黒く鈍い光沢を持つ龍の血が、リホンを見つめているような錯覚に陥る。

「俺がこれをお前に託す理由は二つ。その一、父親の武器は息子に渡さないといけない」
「ちょっと待つアル! ボクは、負けたアル!」
「その二――」
「リューオ!!」
「おい」

リホンが声を荒げてリューオの声を遮る。
するとリューオは、今までに見せた事のない恐ろしい形相でリホンに詰め寄った。

「俺が、卑怯な手でこれを勝ち取ったって事を一生背負わせる気か?」

その気迫に、リホンは言葉を失った。
流されるまま、リホンの手にハンニバルが渡される。

「俺は、試合に勝って勝負に負けた。この村で最強の俺がお前の勝ちを認めるんだ。
 ――ナンバー1は、お前だ。リホン」
「リューオ……」
「お前には、村を出て行くって言うでっかい野望もあるもんな」

リホンがハンニバルを返す気が失せたのを確認すると、リューオは病室の入り口にあるカーテンに手をかけた。
そのまま、何かを言おうとリホンのいる後ろを振り返る。

「来年、俺もこの村を出る。そん時は外の世界でお前をぶっ殺すよ」
「……望む所アルよ」
「あ、そうそう」

リューオは思い出したような表情で、布団の中を指差した。
リホンは指差された場所を目で追う。

「俺が素敵なメモを用意しておいてやったから、是非読んでくれよ。――親友」

最後の言葉を残し、リューオはカーテンの向こう側へ。

「リューオ。ボクから、最後にお願いがあるアルよ」
「ん?」

…………

「……あぁ、約束だ」

カーテン越しにまた一つ、強い絆が生まれた。
勝負の夜は深みを増していく。

 


「おい! リホンが無断でこの村を抜け出したぞ!」
「門はしまってなかったのか!? すぐに追わないと……」
「抜け出したのは随分前みたいだ、もう手が着けられん!」
「門の鍵は閉まってるぞ、一体何処から……」

 


『俺からの別れのプレゼントだ。
抜け出すには、夜しかない。昼なんかに抜け出したらすぐにバレる。
正門には堅い鍵が掛かってて、そこから外に出るのは不可能だ。
俺の家の裏庭に、一人分くらいしかない小さな穴があるんだ。
そこは村の領域外へと直接繋がってる。気構えすることはない、短い洞窟だ。
穴から出たら、後は村が見えなくなるまで猛ダッシュだ。
見つかりやすい位置だが、草原だからすぐに離れられるだろ。
そこからは自分でやってみろ。俺がしてやれるのはここまでだ。
振り返っちゃダメだ。情けが生まれちまうからな。
あばよ、親友』

 


リホンは涙を迸らせ、村を全力疾走で離れる。
村付近では、リホンを探す為の松明の火がちかちかと山々を駆け巡っていた。
痛み止めを体中に塗りながら、村に未練を残してただただ走り続ける。
途中で振り返ってしまいたくなる気持ちが、大きくなり始めた。
そしてとうとう抑えきれなくなり、ふと後ろを向こうとスピードを落とす。

『振り返っちゃダメだ』

リホンは走りながらこの手紙を思い出す。
そこには、昔から癖のあるリューオの汚い文字が並んでいた。
リホンは涙で濡らした手紙を懐に押しやり、再びスピードを上げた。
自分に対する気持ちを無駄にしない為にも。

 


「――そんな事が、あったアル」
「へぇ、いいじゃねぇか。そういうの」
「……そんな簡単に済むものじゃ、ないアル」
「少なくとも、俺よりはずっといいよ」

ルシファは、表情に翳りを作りながら牛乳をストローで掻き混ぜる。

「俺には、語れるような過去が思い出せねぇ」

それだけ言うと、牛乳を吸う。
氷が溶けて、程よい薄さになっている。

「……だったら、これからボク達と作る未来に賭けてみないアルか?」
「未来かぁ。面白いもんが作れればいいな」
「きっと作れるアル。僕はこうやって仲間が出来た事が、既に楽しくて仕方ないアルよ」
「それは、俺も同じだよ」

穏かな笑みを浮かべながら、二人は遅すぎる乾杯を交わす。

 


彼とまた会える確率が限りなく低けれど
この空の下で一緒に生きていることを考えると嬉しくなる。
だから言いたい、親友よ。


『ボクの事、忘れないで欲しいアルなぁ』


あの時の約束は揺らいでいない。
その言葉は、離れ離れになった親友との架け橋のような存在なのだから。

 

 

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